2024年度講習会の実施報告

今年度の講習は、対面とオンラインを利用したハイブリッドでの開催となりました。
今年度の講習では、医療面接に関する知識や技法についてご専門であり、明海大学保健医療学部口腔保健学科の教授としてご活躍されている礪波健一(となみ けんいち)先生に、「対応困難な患者との医療面接」というテーマでご講演頂きました。
「対応困難な患者」の問題点として、不安や不満・こだわりが強い方、クレーマーや詐欺師といった方への対応があげられます。 その中で、不安、不満、こだわり、この3つに関しては感情への対応になるため、真摯に対応し、問題を言語化し、認知的に相手の情動に訴えていくと良いとのことでした。
不安:漠然と感じている不安に対しては、対象がはっきりしておらず解決することが難しいため、不安対象を言語化させ「患者の感じている不安」を「恐怖」へと変化させる。その上で次の目標をつくり行動に繋げていく。
不満:不満は満足との差分から発生し、「先生の良いように治療してください。」と言われ最善の処置をしても、患者の期待値が高く満足してもらえるとは限らない。そのため必ず患者の期待(目標)を言語化していくこと。
また、不満を解消した結果、サービスの質(例:軽度の歯周病など)が、すぐに実感できるものでない場合は、サービスの提供のされ方など主観的な評価になりがちである。こだわり:患者が過去に得た経験や情報から形成された信念が「こだわり」として出てくるが、科学的な根拠が乏しく、現実との矛盾に苦しんで受診してくることが多い。しかし、間違いを直接的に指摘してしまうと反発を招き、余計に固執してしまうため「患者自身のこだわり」を言語化していくことが大切である。
以上のように、不安・不満・こだわりに対して重要なのが、他者からの言葉や声がけではなく「患者自身の言葉で言語化させること」ということでした。
また、会話のコントロールをしていくうえで、①事実→情報収集、②感情→関係構築 、③意志や希望→動機付けといったステップを踏んで考えること。そして、患者が発言した言葉の中から、必要な情報と結びつくワードを使い、キャッチボールのように投げ返すような対話をすると、患者自身から言語化を引き出しやすいことを学びました。そのために、『「おうむ返し」や「リフレーズ」がとても有効である』とのことです。
例えば「昨日から歯が痛いため、明日までに治したい。」といった情報には、
- 事実:昨日から歯が
- 感情:痛い
- 意志や希望:明日までに治したい
と分けて考え、ワードをピックアップして患者と話すことで会話がコントロールしやすくなるとのことでした。
クレーマーや詐欺師は、口腔保健においての通院目的が一致しておらず、問題を解決しても別の問題を提示し、また金品をさりげなく要求してくるため、客観的なカルテ記載と歯科医師会や行政との連携が重要となってくるとのことでした。
質疑応答では、会場から「年配の方から『自分の孫よりも若い人に言われても、心に響かないよ』と言われ、どのように対処すればいいのか?」などの質問もありました。 最後は、ご講演時間がオーバーするほど大盛況でした。
今回のご講演で、医療面接において、どの言葉を「おうむ返し」するのかが重要なことだと改めて感じました。これからは、開かれた質問で患者自身が言語化しやすい雰囲気を作り、患者からより多くの情報収集ができるように接したいと思います。また、心理学や具体的な例を挙げてご講演いただけたので、これまでの経験とこれからの関係構築について想像しやすく、さっそく現場で参考にさせて頂こうと思いました。
ZOOMでの講習会が開催可能になったことで、結婚・出産・育児・介護などでお忙しい方も参加しやすくなりました。今後も幅広い年代の方に気軽に参加して頂きたいと考えております。
藤紫会では、引き続き講習会や研修会等の企画を行っていきたいと考えておりますので、ご意見などがございましたらお寄せください。
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